アンドレアス・タアマイエルが遺書
ANDREAS THAMEYERS LETZTER BRIEF
アルツウル・シユニツツレル Arthur Schnitzler
森林太郎訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)今日《こんにち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)世間の人|嘲《あざけ》り笑ひ申すべく、
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 小生は如何にしても今日《こんにち》以後生きながらへ居ること難く候。何故と申すに小生生きながらへ居る限りは、世間の人|嘲《あざけ》り笑ひ申すべく、誰一人事実の真相を認めくるる者は有之《これある》まじく候。仮令《たとひ》世間にては何と申し候とも、妻が貞操を守り居たりしことは小生の確信する所に有之、小生は死を以て之を証明する考に候。今日まで種々の書籍に就て、此困難なる、又|疑団《ぎだん》多き事件に就き取調べ候処、著述家の中には斯様《かやう》なる事実の有り得べきことを疑ふ者少からず候へども、知名の学者にして斯《かく》の如き事実の有り得べきことを認め居る者も少からざるやう相見え候。マルブランシユの記録する所に依れば、某氏《なにがし》の妻、聖ピウ
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