コのカーテン。そのあおり、
東の表の欄間はすっかり[#図2、絵「欄間の硝子の形」]形つなぎの硝子。こっちからなかなか風が入る。
  ○線路が見える。
   黄色い羽形の上についた信号燈の色 赤、青(夜、)
○こわれた電燈カサが床の間の隅っこにいつからか置いてある。
○大雨
 急行がとまっている。
「久栄で 白米一俵とりにきよった たき出しでもするじゃあろうて」
 汽車/Kisha いんでてか?
 麦の穂先だけのぞいている、
 こっちの川を越すと店へ漬る、「水ちゅうもんは早うひくのう あんた」
 大雨があがる、
 晴天 碧い空に白い雲、西風爽か
 山の松の幹もパラリとしてすがしく篁の柔かい若青葉がしなやかに瑞々しく重く見える
 多賀さんの下の高みで、家組が出来て、人が働いている 白シャツ姿。

 廻り椽。浅い池 椽のすぐ下まで。
 青い実のついている梅 かさだけ時代もので、胴がよせもののとうろう、
 つつじ
 杉、しゃぼてんの鉢
          ――○――
 かた木の庭木 大名竹 槇 周防の花
 下ぬりのまま五六年たった壁。
 床の間に紫檀の台、上に焼きもの。
 どくろに蛙がとまっている飾もの
 掛ものは歌集のきれ
  くまもなきかゝ見と見ゆる月影に
   こゝろうつさぬ人もあらしな 云々
○近さァを区長にせよう思っとったら洗濯もんの騒ぎしよったから どうとも云い出せんようになってしもうた
○野菜市場。近さん120[#「120」は縦中横]本の胡瓜を「こりゃわしが皆ひきうけた」と二円何ぼかで買う。小商は、大きいが一本五銭なり。

 よろしゅうあります
 とんびース(飛の魚)
 つかあせ
 やっつかわせ(やっつか)ときこえる
 さア、どんなもんであ[#「あ」に傍点]りましょうかな
 えっと(沢山)切った
 だいしょう 出[#「出」に傍点]来ます(多少の意味)
 生えちょるか
 恐れちょる
 頭がはしる(痛む)

 裏の田の畦づたいに中谷の婆さんが 国旗をかついで多賀さんの当番参詣を終ってかえって来る
「えろう御無礼どすが ここから通しても[#「も」に傍点]らいます」
 多賀子
「あの武の字がちごうちょる」
 武が※[#「武」の「弋」が「戈」、583−8]の由。武運長久と書いてあったが
「武運長久が襷がけならいいんだろ。この頃は白襷がはやるから。こんど出来た字かもしれな
前へ 次へ
全3ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング