うかめて力無く、薬をわきに置くと偶然さっき、第一の若僧の置いて行った十字架にさわる。
指でつまんでそうっとわきにどける。
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老僧(理智的な眼つきと口調で)澄んだ正しい御心が、それはお感じなされた事でございましょう。
そして又、それは、最も幸福に御成りなさる道でございます。
第二の若僧 お師様。
ほんとうの御心で仰せられるのでございますか?
私などは、死ぬ事より恐ろしい悲しい事は無いと存じます。
あの暗くてじめじめした塚穴に入れられるのかと思いますと――
死ぬ、その時になっても私は、「生きたい」と申すでございましょうきっと。私はちっとも無理な事ではないと存じます。
法王 まだ若いからじゃ。
世の中に死ぬより恐ろしい悲しい事は有るのじゃ。
「生き過ぎた」と申す悲しみより、「死」の悲しみはうすいのじゃ。
わしは少し、「生き過ぎた」仲間なのでの。
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第二の若僧が又何か云おうとすると下手の雑な彫刻をした扉が細く開いて遠慮深くここの主夫婦が出て来る。
目立たない――、それでも内福らしい着物に老婆の小指の指環が一つ目を引く。
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老爺 いかがでござらっしゃります。
先ほど、お薬を煎じしゃった火が大方強すぎた事んだろうとの、婆《ばあ》がいかい事案じて居りまする。
婆 ほんにお坊様《ぼんさま》。
このほうけ婆が、ついうっかり薪をそえたで、常より苦うでござらしただろうかと案じましたので、おわびに出ましたでござります。
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老僧話して居るつもりだけれど声は高いし一つ部屋なので法王に話すと同じ事になって仕舞う。
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婆 (人の好いおしゃべりの口調で)それにの、お天とう様の、のぼらしゃった頃からつめてござらした衆が一刻も早くお尊《たっと》い法王様をおがみたいと云うてでござりましての。
そらな、おききなされませ、
あの広場での人声がここまでどよんで参りましょうが。
老僧 しかしね、
どうしたって今日は駄目ですよ。
大変お疲れ遊ばしてだし第一今御目ざめなすったばっかりなんだから、
「明日」って云ってお帰しなさい。
その
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