沁々した愛情と感謝と
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)真個《ほんと》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しん[#「しん」に傍点]がムズムズしているようです。
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「禰宜様宮田」が、いつか単行本になる時があったら、是非云い添えたいと思っていたことを書きます。
あれは、そんなに大して大きなものでもなかったのに、非常に沢山の欠点を持っています。其等の欠点に対しての自分は、真個《ほんと》に何処までも謙譲ではありますけれども、此頃になって、あの作は私の一生の生活を通してかなり大切なものになって来ました。そして、その大切なものとなった原因は、自分にとってあの作を、彼程満足出来ないものとした全く同様な「其等の欠点」なのです。
コンポジションの上の不完全さはともかくも、あの作にはそれ以前のどれにもなかったに違いない、またよしあったにしろあんなに明かではなかった思想上の、多くの矛盾や、躊躇や、不徹底さのあるのは確かです。なんだかしん[#「しん」に傍点]がムズムズしているようです。
全体に漲っているその動揺が、あれから半年経
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