である。
プロレタリア文学運動がはじまってから、作家と理論家との活動は、当然新しい統一と協力の方向をとった。そのころの日本における階級的自覚の段階から必然されて、プロレタリア文学運動では、理論活動が創作活動よりも先進した。自然発生にあらわれはじめた無産者文学一般の中に、プロレタリア文学とルンペン・プロレタリアート文学とのけじめをつけ、プロレタリア文学と農民文学、同伴者文学との現実的な関係をあきらかにしたのも、プロレタリア文学理論であった。文学内部の課題として、世界観の問題、内容と形式の問題、リアリズムの発展についての研究、主題の積極性の問題など、すべての理論活動は、作家の創作活動の具体的な動きに沿いながらも一歩半歩ずつ先に立って、未知の社会的・文学的崖に、切りどおしをつける役割をもった。その間に、理論家と作家との感じる困難がなかったわけではない。多くの摩擦があった。作家はいつの時代にでも、一つの段階からより成長した段階への移行に時間がかかる。作家にとってその成長のひとまたぎは、どんなにささやかなものであるにしても、つねに血肉をもって生きられたひとまたぎでなければならなかった。しかし、
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