アの生活からの取材によって描かれている作品でも、その作品が全体としては労働者階級の立場に立って社会的現実のリアリティーを描きだしており、日本の社会発展の下で、その主題が発展のモメントに立って扱われている場合それはけっして小市民文学、インテリゲンツィア文学ということはできない。よしんば、職場の読者が、その作品を批評して、目の前に労働者の生活をかいてないというにしても、民主的文学者は、そういう作品でさえも、今日の日本の労働階級の解放と日本の民主主義の達成にとって、どういうつながりをもっているものであるかということを理解させてゆくことが大切である。「それはわたしたちの世界でない」という言葉には、労働者階級としての危険がふくまれている場合さえある。支配者、そして搾取者、さまざまの形でうごめく反動者たちにとって、人民階層の間にそういう疎隔のあることは、どんなによろこばしいことだろう。労働者階級が、かりに自身の仲間、協働者である農民、小市民、インテリゲンツィアなどの革命的価値を清算主義的に見るならば、抑圧の側にとってこんな好都合なことはなくなる。労働階級は孤立し、孤立は無力を意味し、解放は実現され
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