じさん」とね、あの樺のとこから一緒に来たのよ。
今夜私の御家へとめて頂戴って。
そいでね、御馳走してあげるから私達にお話して頂戴ってお約束したのよ。
ねえ、おじさん。
B まあそう。
そりゃあ、ほんとに面白いわ。
さあ聞かせてちょうだいな。
[#ここから4字下げ]
A、Bは旅人の傍にすり寄る。
C子は旅人を観察する様な顔をして少しはなれて立って居る。
たちあがった拍子に落ちた青い毛糸の玉がころがって居る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
旅 なかなか抜目のないお子達だ。
おじぎだけでは許されそうもないからお話をしてあげずばなるまいかな。
やれやれと。
[#ここから4字下げ]
旅人はさっきまでB、Cが掛けて居た木の切り株に腰を下す。
A、Bは後《あと》について、旅人をはさんで向い合った様にしゃがみ、
Cは糸玉の落ちたのを気づきそれを片手にひろいあげて旅人の後の方に近く立つ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
旅 私はね、あの彼方に遠く遠く見えて居る青い山のかげで生れたんですよ。
お天気のいい朝|
前へ
次へ
全9ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング