え。
まあほんとに私が行って見たらどんなだろう。
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Cは手を止めて向うの方をながめる。
沢山の家並やかすかなどよめきに想像をたくましくして居るらしい様子。
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B 私これを明日迄にしあげなけりゃ。
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Bはうつむいて、せっせっと編みつづける。
Aが旅人と一緒に丘のだらだら坂をあがって来る。(手に花の入ったかごを持つ)
(檀に上る段々をだらだら坂のつもり)Cが見つける。
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C ああ、Bちゃん、Bちゃん、
Aちゃんが来た事よ。
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(のびあがる)
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B まあほんとにねえ。
あれ、誰だかよその人をつれて来てる事よ。
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旅人が二人に近づく。
二人は少しはにかんだ様にかたまる。
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A(気軽に旅人からかけぬけて二人のそばにより)この「おじさん」とね、あの樺のとこから一緒に来たのよ。
今夜私の御家へとめて頂戴って。
そいでね、御馳走してあげるから私達にお話して頂戴ってお約束したのよ。
ねえ、おじさん。
B まあそう。
そりゃあ、ほんとに面白いわ。
さあ聞かせてちょうだいな。
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A、Bは旅人の傍にすり寄る。
C子は旅人を観察する様な顔をして少しはなれて立って居る。
たちあがった拍子に落ちた青い毛糸の玉がころがって居る。
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旅 なかなか抜目のないお子達だ。
おじぎだけでは許されそうもないからお話をしてあげずばなるまいかな。
やれやれと。
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旅人はさっきまでB、Cが掛けて居た木の切り株に腰を下す。
A、Bは後《あと》について、旅人をはさんで向い合った様にしゃがみ、
Cは糸玉の落ちたのを気づきそれを片手にひろいあげて旅人の後の方に近く立つ。
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旅 私はね、あの彼方に遠く遠く見えて居る青い山のかげで生れたんですよ。
お天気のいい朝|
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