それぞれの過程をもって現代の社会の根本的な矛盾を反映している。そこを芸術の中に照し出すというところに有ると思う。リアリストの眼はその急所を掴む眼であり、その眼は社会の現象万端を動的な発展的なものとして観ることの出来る世界観によって培われるのではあるまいか。
 私は、自分一人の問題に就いて与えられた質問から拡って、リアリズムの問題にまで触れているのであるが、今日の現実の中で我々が何故社会主義的リアリズムという立前に立ちうるか、そのような現実の根拠は何処にあるか、ということについて、読者も恐らく興味を持たれるであろうと思うが、それはまたの機会にしたい。[#地付き]〔一九三四年十二月〕



底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年12月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「文芸通信」
   1934(昭和9)年12月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年1月16日作成
2005年11月8日修正
青空文庫作成ファイル:
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