問に答えて
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瑣末《さまつ》な

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)日常|瑣末《さまつ》な

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)書かない[#「ない」に傍点]と云われている
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 この三四年の間、小説を書かないのは何故であるか。そういう問いが記者によって出された。
 私の今の状態から云えば、この問いの中で書かない[#「ない」に傍点]と云われているところは既に書かなかった[#「なかった」に傍点]という、文法の上では過去の形でされる方がふさわしいし、又全く小説を書かなかったというわけでもないが、質問そのものは面白く思った。
 或る作家が、書く、書かないという現象をそれぞれについて見ると、一口で片づけきらぬ内容がある。盛に書くが、作家としての真の発展という視点に立って見るとそれは衰退への道を辿っている場合もあり、雑誌の上に目立つ作品は書かぬが、生活的にはその期間に却ってその作家にとって大切な成長がされているという場合もある。私は、自分の場合は、後の部に属す性質をもっ
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