で私たち日本人は人民としての自分たちの運命の主人公になろうとしている。世界の歴史が一つのページの上にブルジョア民主革命と、勤労人民の民主主義社会の建設の見通しとを重ね合せて、日本の上にそれを課題としている。私たちのもっている問題は実にどっさりである、数も種類も。
 平和な民主的革命というものは、人間性の新しい社会的展開であり、その可能性をもたらすような社会を一日も早く実現してゆく努力のことをいう。之まで文化といえば、衣食足った後にひまな時間に従事する仕事のように思われていた。本を読むといえば、それを生意気と思われたのは、女に対してばかりの偏見ではなかった。また文化性をもった人というのは工場から、務め先からかえってくればシャレた背広にでも著更えて外国映画をみたり、むずかしいカクテールの名を覚えていたり、外国文学の筋を話すことが出来たり、つまりその人は二十四時間の大半をとりもなおさず一生の大半を、利潤のために働かされている勤労者ではないような風をすることが文化性と思われていた。「まあ、そういう方とは見えないわ、工場へおつとめになっていたの?」というおどろきの言葉が侮辱とうけとられずほめ言葉
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