かと思うより先に、シェークスピアやホーマーの文句を思い出し、そのものを徹し、その描写にまとめて、自分の直観に頼らない、第二流文学者――否、芸術家的素質しか持たなかったか、と云う些の物足りなさ、惜しさ。
ヘンリー・ライクロフトの私記。p. 181.
英国民が偽善者と云われることにつき、真相をギッシングは実に明確に、愉快に指摘して居る。彼の意見によれば英国民は決してヒポクリットではない。この言葉の使用法は間違って居る。正しく云えば英国人は、パリサイ的なのだ。悪徳の第一は、常に己れを正義とする信念にある。彼等は、“gone wrong”は認める。けれども、英国人たる者が生得権として敬虔、真実な徳義を持つと云う信条は決して否定しない。自分等は選ばれたる者で、特別な精神高揚の努力なしで、仁慈に達せられると思って居る。自分の金を出して一つの教会を建てる騒々しい成上りものは、そう云うことで社会の尊敬を得ると思うばかりでなく、彼の奇妙な小さい霊に、彼は神を喜ばせること、人類に貢献することをしたと信じるのである。両性間の徳義についても、偽善と云う言葉は甚しく間違って使われて居る。英国人の大部分は今日
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