いう点に関して周密な考察を必要としているのだと思う。文学作品の創られてゆく過程を引用の文章のように二元的に見ることが不完全であるということは、過去数年来の刻苦によって、既に明らかにされていはしないだろうか。
現実の起伏の詳細と変化とを世界歴史の進歩の方向において感じ、理解し、全的に描き出すことで、とりも直さず文学が次の世代にも生きる生命をもつのであると見るべきだと思う。文学作品そのものの側から云ってもし政治との連帯が生じるならば、それはまさしく作家の描く現実そのものが、その現実の中からこそ一定の政治を発生させているという、その社会的な事実において、初めて可能な現象なのである。[#地付き]〔一九四〇年十一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十二巻」新日本出版社
1980(昭和55)年4月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
親本:「宮本百合子全集 第七巻」河出書房
1951(昭和26)年7月発行
初出:「九州帝国大学新聞」
1940(昭和15)年11月27日号
入力:柴田卓治
校正:松永正敏
2003年2月13日作成
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