たち日本の婦人は、これらすべての軍事[#「軍事」に「ママ」の注記]を決して他人事として感じておりません。新しい日本が、より人間らしい世界正義の道に立って進んでゆくために、苦難を経験しつつある日本婦人の社会的成長の一つの目標として婦人参政権も認められたとき、私たちは、これからこそ、重苦しい過去の絆をふりはらって、思慮と勇気とに満ち、女らしい聰さにみちて、明日の明るい日本を建設するために扶け合わなければなりません。
 物を云う家畜のように群をなして追い立てられ、疲れ果てた体と心とを休めるためには、小さい屋根の下の灯と一つの炉ばたしかもたなかったこれ迄の生活は、日本の婦人にとって余りみじめではなかったでしょうか。私たちは、婦人の生活上の力量がこの社会のより幸福な組立てのために、どれほど重大な価値をもっているかを自覚しなければなりません。その自覚に立って、社会全体の向上というひろい見地から婦人共通の福祉のために配慮し、協働し、それを実現して行かなければなりません。民主的な社会の建設ということの実体はここにこそあると思われます。精神に於ても肉体に於ても、一人一人の日本婦人のうちに隠されている能力
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