が消滅しました。
 その中心にまだ天皇一族の特権をひろく認めているような憲法が、民主憲法といいきれないことは世界のひとしく認めて問題としている事実であり、最後的な承認はまだされておりません。しかし、過渡的にもせよ、こうして憲法が変ったことは、それにつれて民法、刑法の変更をもたらし、これまでの日本の婦人がおかれていた全く従属的な地位は高められました。このことは、私たちが公平にみとめてよいことだと思います。
 ところが、こうして憲法・民法・刑法などの改正によって、男子のひとしい権利と義務とを負う社会の成員となった日本の数千万の婦人が、現実にきょう生きている条件はどうでしょうか。
 これに対する答えは、実に簡単明瞭です。なるほど、字の上で、人民の生活は民主的らしく書かれるようにはなった。けれども、毎日の現実は、ちっとも民主的という方向で私たちが希望しているような安定をまして来ていない。もしきょうの私たちの生活を民主的というのならば、それは皮肉にも、インフレーションや政府の弱体から来るすべての苦痛を負わされるのはいまも人民が主であるという実際をいいあらわす民主であるとさえ感じます。
 この事実
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