広告の間に無慮七十頁を占めている。『婦人公論』五十頁のグラビヤは、「新年を迎える髪」から始って、映画物語、執筆作家の写真自叙伝、キッコーマン醤油の広告に終っている。ここにも、『主婦之友』同様、男女俳優、舞踊家をマネキンとした「お年始のお客はこうして迎えましょう」という写真物語が盛られている。『婦人公論』は、やや進歩的な職業婦人、インテリゲンツィア婦人を読者の目標とする結果、グラビヤにも他の婦人雑誌にはない「女主人」という一種目を加えているのは注意に価する。しかも、撮影されている「女主人」は「おでんや」、フランス女の洋服店主、支那料理店主、東京一高価な靴店セキドの女主人、洋服布地店主など、つまり有閑婦人の消費的生活、浪費趣味をとりあげ反映しているにすぎない。失業労働者の妻、焼芋屋の女主人、青森地方飢饉地で出征兵士の残された妻が、蕨《わらび》の餅をこねている女主人としての必死の営みの姿などは、ブルジョア的欺瞞をもって婦人大衆の眼前から完全に覆いかくされているのである。
経済恐慌による中間層の急速なプロレタリア化は、日本における小市民層の婦人大衆の日常生活をその根底からおびやかしている。ど
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