の娘、細君にとっても正月になれば裾模様の晴着をつくり、「新家庭の迎年のお支度」をするなどということは、絶対に実現不可能である。実際においては資本主義社会の逼迫に圧せられて消えてしまった小市民的な婦人の伝統の夢を、そのままグラビヤの絵そらごとの上に生きながらえさせているだけでも、その小市民性への追随という点でブルジョア婦人雑誌の保守的傾向の一端を曝露している。世帯の切なさ勤めの切なさから、現代の社会機構に自然と疑を抱く婦人大衆の目を、そういう数々のグラビヤに吸いよせ、現実に対する階級的直視をしばらくでもはぐらかして行く効果に至っては、ブルジョア婦人雑誌の文化発展の上に演じている反動的役割を見過すことはできぬ。
さらに、ブルジョア婦人雑誌の編輯者のポケットにある、編輯暦なるものを調べると、われわれはそもそもブルジョア婦人雑誌の包括する文化がいかに封建性の上に立っているかに驚かずにはいられないであろう。ブルジョア婦人雑誌は、編輯暦の最も重大な部分を「正月」「七五三」「新学期」「盆」「結婚月」などに占められている。これらの月、全日本のブルジョア婦人雑誌は同一の題目を編輯主題として、たがいに猛
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