日本におけるプロレタリア文化運動が進展するにつれ、『戦旗』『婦人戦旗』編輯局は急速にその欠点を清算した。そしてプロレタリア大衆雑誌として一層効果的な、健全な活動を開始しはじめると、官憲の圧迫は想像以上に猛烈となり、合法的な『戦旗』『婦人戦旗』はほとんど非合法出版物のような窮屈な状態へ追いこまれた。日本におけるプロレタリア文化啓蒙運動の正常な発展は、一九三一年の秋日本プロレタリア文化連盟が結成され、その出版所からプロレタリア大衆雑誌が発行されるに至って、初めて公然と全面的な反映を見るようになったのである。
『働く婦人』は、このような強固な日本プロレタリア文化活動の革命的な発展の基礎の上に立って発刊されるものだ。百五十一万人の婦人労働者をふくむ日本のプロレタリアート、農民、小市民の婦人大衆に向って、彼女に真の解放と幸福とを与えるプロレタリア世界観を啓蒙し、同時に階級の半身として闘争する婦人大衆のあらゆる自発性を反映させるものとしてわれわれの婦人雑誌『働く婦人』は発行される。プロレタリア文化活動における正しい大衆性、特に過去、現在の日本ブルジョア封建的教育によって文化水準をおくらされている未組織婦人大衆を吸収するために欠くべからざる条件としての、いきいきした、親密な階級的日常性、わかり易さ、内容の生活的な多様を、同時に最も正確な階級的観点によって現在資本主義日本に起りつつあるあらゆる国内的・国際的事件を敏速にとりあげ、それに対する正しい認識と行動との方向を婦人大衆に示して行くことなどが『働く婦人』編輯局に課せられた基礎的な任務なのである。『働く婦人』の浸透力によって婦人大衆をブルジョア文化の影響からひきはなし、解放に向って闘うプロレタリア文化の下に決定的に結集させるべき任務を負うているものなのである。
『働く婦人』創刊号、二月号、三月号を通じて見ると、右のような階級的刊行物としての基本的な任務についての理解は編輯局内でゆがめられず実践にうつすべく努力されていることはわかる。政治・経済・時事問題に関する解説的記事とともに、『婦人戦旗』に持たなかった相談欄・言葉の欄・家庭婦人のための「重宝ノート」などまで『働く婦人』には包括されている。数多《あまた》のブルジョア婦人雑誌がそれを共通な特徴として婦人大衆の日常的な要求に訴えている実用記事を、『働く婦人』は階級的な扱いかたで雑誌の
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