十億の多数なる人民の道の上にしかないことを確証することであるから。このような行手の眺めは「わたしたちも歌える」に見られる小さな婦人たちの発言のうちにも閃いている。
きょうのジャーナリズムの上にあらわれて文学とよばれているものの大部分がどのようであろうとも、歴史とともに文学は変りつつある。
ヒューマニティーと歴史との関係は、益々鋭く一人一人の作家の生きかたとその文学の上にあらわになって来た。婦人作家が人間としての自立性を高めて来るにつれて、――女の文学から、人間の文学に高まるにつれ――理性によって選ばれ、方向づけられたヒューマニティーの意欲ある展開が婦人の文学の上にも花咲くことは当然期待されることである。
作家について語る場合、その人々の文学作品を見るばかりでなく社会的なすべての発言、すべての行動が統一的に見られ互に関係しあうものとして見られるようになりつつある。そして、更にいくつかの変転を経た日、「日本の社会における婦人と文学」との苦しい関係を語りつづけて来た婦人文学の特殊性は、人間の歴史の勝利の歌声のうちにとけてゆくのである。[#地付き]〔一九五一年四月〕
底本:「宮本百
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