れわれを堕落させて碌な評論も書けない人間にしてしまったと反省するでしょう。しかし、そういう人達はそれを申しません。民主的な人間の生き方は、治安維持法が撤廃されたときいろいろな人が口やかましく申しました。横暴であってはならない、思想の立場が違ったからといって弾圧してはならない等々、しかし一寸人を怪我させても罪を与える警察があれほどの人間を殴り殺しても刑法上の罪に触れなかったのです。民主的な生き方とは、私どもが自分の正しいと信ずることのために自分がどこまでも曲ったものと闘って行くことが当然であり、自分が正しいと思う生活をつくって行くことであります。私どもが民主的に生きるならば、小林を殺した治安維持法のことをもう一遍考え直し、小林を殺した力と徹底的に闘うということ、そのためには民主的な社会、民主的な文化というもので日本の隅っこにまだたくさんいる反動的な力を打砕かなければ私どもの人生は決して自由なものになりません。私どもの自由のために私どもは闘わなければならない。それは民主的な生活を樹てる第一の条件です。それからそのためにはいろいろな困難とか自分に対する痛い目、そういうものも自分が勇気をもって
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