います。この頃新の字が何にでもよくついている。しかし、百万の新ができたとて驚かない。何故ならば本当に新しいものになろうとすれば皆新の字がつくべきです。あなた方自身も自分の新しい今日、明日の新しい日本を創り出すために熱心に生きていらっしゃる。お互いつくって行く文学は実際的な内容です。ですから文学が一つの画に描いた餅のように腹のたしにならないようなものにはならない。腹の空いたとき腹がなぜ空くかということがわかる、この腹の空いた嫌な気分を何処に持って行くかということがわかれば腹が空いたのも忘れて笑う。こういう生き方もまたわかる。そういうようなものが私どもの文学です。そういう意味では、男の作家も女の作家も表面上区別はありません。先程申上げたぐにゃぐにゃした女心など一つも必要としません。女は女として生れているから、お婆さんになっても女の可愛らしさ、女の美しさがる。男はお爺さんになっても男の雄々しさ立派さというものがある。そういう風な素直なあるがままの人間として、熱心に真面目に生きて行く人間としての文学、そういう情熱の溢れるものとしての文学、お互いがお互いの言葉として話せる文学、そういうものを求め
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