言一つ」は、様々の点で歴史的意味がある。当時のそういうプロレタリア文学理論の未熟さに向って、彼としての良心、激情性、感傷をうちからめ、無産階級の文学発生の必然を認めることはとりも直さず自身をこめて知識階級というものの成長の可能を否定するものでなければならないと考え、作家としての自分の存在の意義さえも最も受動的に固定させたものであった。この「宣言一つ」の中で、武郎は自分の出生、教育が、勤労する人々と同じでないから彼等にとって自分は無縁の衆生の一人である。新しいものになることは出来ないことだから、成らして貰おうとも思わない。彼等のために働くという「そんな馬鹿気切った虚偽も出来ない」と、彼は、当時の考えにしたがって、体で働いているものでなくては、どんな学者でも、思想家でも、歴史の進歩に真に寄与することは出来ないと考えたものであった。
 今日になって見れば、有島武郎のこの考えかたの誤りは、全く当時のプロレタリア文芸理論家たちが抱いていた階級闘争と階級の関係、また文化との具体的な関係を見る上での未熟さを反映したものであった。文化・文学が、階級の動きとの関係で見られる場合、文学はただ従の関係でだけ
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