いもし、同情もし、或る共鳴は感じていても、決して同じ者共とはなり得ないのである。
それなら、私がその同じ流れの中に漂って見たらどうか! なかなか自分の溺れないために人のことなどは見てもいられなくなる。
岸から竹を延している今までにも私はあきたらなくなって来たと共に、一緒に濁水を浴び、苦しまぎれに引っ掻きもがいて、手も足も出なくなって終ってしまうのは、ただ一度ほかない私の生涯にあまり惨めである。
で、私はほんとうに、謙譲になり丁寧になって、而も今の不平や恐れをなくするにはどうしたなら好いのか? 私は情ないような心持になってしまった。
どこかで、
「お前の花園は一体どうしたんだ? もうそろそろ芽生えぐらい生えそうなもんだになあ!」
と嘲笑《わら》われているような気もする。
けれども、私は諦めの悪い人間だ。どうしても、ものを「あきらめ」て静かに落付いて、次《つい》ではそれも忘れてしまうということが出来ない。
それ故「世の中というものは、どうせそんなものさ!」と落付いてしまうことが出来ないので、いつでも不平や、悲しい思いや、苦しい思いやをして、「賢明な人々」からは妙な同情を受けてい
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