下や丁寧を何でもなく見ていたということは恐ろしい。
私共と彼等とは、生きるために作られた人間であるということに何の差があろう?
まして、我々が幾分なりとも、物質上の苦痛のない生活をなし得る、痛ましい基《もとい》となって、彼等は貧しく醜く生きているのを思えばどうして侮ることが出来よう!
どうして彼等の疲れた眼差しに高ぶった瞥見《べっけん》を報い得よう!
私共は、彼等の正直な誠意ある同情者であらねばならなかったのである。
世の中は不平等である。天才が現れれば、より多くの白痴が生れなければならない。豊饒《ほうじょう》な一群を作ろうには、より多くの群が、饑餓の境にただよって生き死にをしなければならないことは確かである。
世が不平等であるからこそ――富者と貧者は合することの出来ない平行線であるからこそ、私共は彼等の同情者であらなければならない。
金持が出来る一方では気の毒な貧乏人が出るのは、宇宙の力である。どれほど富み栄えている者も、貧しい者に対して、尊大であるべき何の権利も持たないのである。
かようにして、私は私自身に誓った。
私は思い返した。
自分と彼等との間の、あの厭わ
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