なお慰めの言葉をいただきまして」というところから先を、気をつけて読んだ。はる子は持ち前の地味な気質から、自分の心持は表面に出さないように努めているのが文章の調子でよくわかった。それでも、この手紙を××○○会社の同僚一同へあてて書く気にまでなった圧えきれない熱いものが、切ないほど細い女らしい字のかげに溢れている。
「一昨日会社から使で解雇通知と金一封をいただきました。あけて見ましたら、百五十円也入っておりました。不束《ふつつか》ながら私が七年間こんな体になるまで会社につくした労力は、百五十円のねうちでございましたのね。ホホホホ………」
ミサ子は、この文句を繰返し読んでいるうちに頬っぺたの下の方が鳥肌だって来るような強い感じにうたれた。
みんな体を大切にして元気で暮すように。そこで働いていた間、みなさんが自分に優しくしてくれたのを忘られず、挨拶を書く。万一気がむいたら遊びに来てくれ。そういう言葉の終りに、さりげなく「私の病気も伝染性ではないそうで、そればかりはせめてもと思っております」といかにもはる子らしくつけ加えてある。――
ミサ子は、しづ子に手紙を返しながら、
「慰問金のこと、ど
前へ
次へ
全74ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング