同じですわ」
「――でも、ふだんの癖がおありでしょう! 私はほんとに同じことだから……」
 そういう心遣いは、ミサ子に飾りない親しさを深く感じさせた。数分前は見も知らなかった女と寝るような気がせず、ミサ子は快活に、
「じゃ私右側にやらせてもらうわ」
と云って、自分から先に布団に入った。
 電燈を消すと間もなく、沢田は眠ったらしく、速いかるい寝息をたてはじめた。しん[#「しん」に傍点]が疲れていると見え時々ぴくり、ぴくりと細そりした体がつれるのが感じられる。ミサ子は相手の眠りを妨げまいと凝っと横をむき、暗闇の中で目をあきながら、自分のとなりで若い体が疲れで痙攣するのを全身で感じていた。
[#未完]




底本:「宮本百合子全集 第四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年9月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第四巻」河出書房
   1951(昭和26)年12月発行
初出:「婦人之友」
   1932(昭和7)年1〜4月号(著者検挙のため未完)
入力:柴田卓治
校正:松永正敏
2002年4月22日作成
2003年6月29日修正
青空文庫作成ファイル:
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