税は重い刑でとりしまるとおびやかされている。政府は、日本の目下の状態として、やむを得ないと責任をさけるが、大きい男の肩にしょわせた包みの中にはちゃんと自分たちのとりまえがふくまれている。人民はしぼられっぱなしである。
 人民生活をわだちにかけて、一握りの特権者が利慾をたくましくしようとしている国際的な便乗図絵は、無邪気な昔の人が目を見はった地獄図絵よりも偽善的である。地獄絵で、赤鬼、青鬼は金棒をもち、きばをむき、血の池地獄へ亡者どもをかりたてた。しかし、きょうの日本の便乗悪鬼は、鼻の下にチョビ髭をはやして外国語を話す紳士首相の姿をしていたり、さもなければ、でっぷり艷のいい二重顎にふとって、白いバラなどを胸にかざった党首としてあらわれたりしている。
 言論・出版の自由は、世界の公約であるけれども、日本には用紙割当事務庁というところが新設されて、主務大臣の野溝は、もう地方新聞に紙はいまにいくらでもまわしてやると失言した。人民の公器であるラジオの民主化がいわれているうちに、政府は全く官僚統制の放送事業法案を議会に上程した。これらの言論・出版の自由の抑圧にしても、きょうでは、出版の民主化とかラ
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