文学上の復古的提唱に対して
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)抑々《そもそも》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中に|茶の湯《ティー・セレモニイ》という
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いき[#「いき」に傍点]
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一 古典摂取の態度
この間、ある人に会ったら、こういう話が出た。どこかの宴会でその人が日蓮宗の坊さんに逢ったら、その坊さんが、この頃では私共も古事記なんかをよまないとものが云えないようになりました。五・一五頃の若い軍人は殆ど日蓮宗でしたが、近頃はああいう連中が誰も彼も古事記を読みますんで、ということであったそうだ。
岩波文庫に古事記が出ていて、岩波さんに云わすと、あれは実は改版したいのだそうだ。余りよくないと出版社の良心から思っているのだそうだが、どういうわけか近頃はあれが出て、刷っても刷っても売り切れるので、と微妙な痛し痒しを経験しているらしい様子であるとも聞いた。
今日文学の仕事にたずさわる者としてこれらの話をきくと、なかなか面白いものがある。
文学
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