文学のひろがり
――そこにある科学と文学とのいきさつ――
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)空想《ゆめ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ミハイル・※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]シーリッチ
−−

 岩波新書のなかに、米川正夫氏の翻訳でヴォドピヤーノフというひとの書いた「北極飛行」という本がある。
 これは純粋な文学書ではなくて、ソ連の北極探検飛行の記録である。著者も作家ではない操縦士である。彼の指導によって北極の歴史的飛行が完成されたのち、「如何にして空想が現実となったか」という題の記録を『新世界』にのせた。それを米川氏が着目して、ルポルタージュとして上々のものという評価から紹介されたものである。
 二百六十頁に満たないこの本は、実に面白い。読み終るのが惜しいと思いながらも一気に読めてしまう。そういう魅力の深い本だが、その内容がまた幾つもの文化上の課題を暗示するのである。
 科学を専門とする人は、この本の中から必ずその方面の
次へ
全10ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング