明です。
四 書記長の発言にわたしを評価することは他の党員作家のためにならないという意味があったようです。それはどういう理由からでしょう。わたしが立候補というような当面の便宜に役立たず創作の仕事をつづけ、また特定の性格に順応しないことが他の党員作家のために有害だという理由でしょうか。それとも私の文学活動を全体として階級的立場から評価することは有害であるというわけでしょうか。
前者についてわたしは立候補しない自身の理由を明白にしました。その理由が現在の事情で客観的にも妥当性をもっていることは、教育委員会の選挙のとき来訪された方も理解されていました。
わたしの文学的活動の階級性についてもこまかく説明したとおりです。もとより、わたし一人の作品が民主主義文学の全部を代表するものではあり得ないし、一人の作家の一定の作品に革命的課題の全部――教育問題から土地革命、中小商工業者、民族資本家の問題まで盛ることも不可能です。今日の要求にこたえるべき階級的文学の多面性に対してわたしがどのように積極的で開放的な見解をもっているかということは新日本文学六月号「その柵は必要か」に示されています。
自分として将来にますます多様で豊富な活動を求められているのは当然のことです。現在の事情の最大限に活動し、革命にプラスする小説評論をかいている作家。そしてそのことによって進歩的読者に社会主義の具体的図絵を与え、党の意義を普及しつつある作家をその事実にたって公正に評価することが他の党員作家にとって有害であるということは理解しにくいことです。文学における政治の優位ということは文学運動と作家とを文化上の経済主義にしたがわせ、そのいうことをきかせるということではないと思います。文学のもっている浸透的で恒久性のある革命的力が理解されてよいと思います。
現在、反動権力と反動文化の新しい攻撃に対してますます広汎な統一戦線が求められているとき小市民的な宗派主義を克服し、同時に「勤労者文学」一般でなく、プロレタリアートの文学の自覚を明らかにして党員作家の独自な活動により一層の展開の道をひらくことはきわめて必要です。その点で党員作家全部がさらに充実した前進を求められていることは明かです。
このように強力な弾力性ある新展開がされることによって、党の文化政策も実質的に展開されるものだろうと思います。
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