文学界』(二月)の座談会は一種の印象を与えた。ある箇所で気分的に亢《たか》ぶったようなものがあると思うと、最後は、落語の下げのような文句が云われて問題は出発点へ逆もどりしたまま、おやかましゅう、とお開きになった形であった。語る人々の内的な混乱や堂々めぐりがそのままに示されている点で、様々の問題を与えていた。
昨今作家の生活、作品が現代一般人の生活から浮き離れ読者の関心を失って来ているということの文壇人自身による自覚と、それに対する対策とがこの座談会でも真先に語られている。林房雄氏は、真面目な文学者評論家は当今意識的に文壇を離れたがっている、と云い、岸田国士氏は文壇が重荷になっている、と明言しておられる。そして、文学が大衆性とか指導力とかを持つようになるためには、実業家・官吏・軍人等の真面目な要求と共通するものを文壇における中心問題として二年でも三年でも提唱しつづけるということが我々の義務であるという林氏の結論が出されている。
「小説の刃は衂《ちぬ》られなければならない」と、芸術の光背を負うて陸離たるが如くあった室生犀星氏が、近頃の抱負として「家ではよき父であり夫であり、規律を守り一家
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