与えよという叫びはフランス大革命の時から労働者階級の肉体の叫びであった。それがとりもなおさず人生を与えよという叫びであるからこそ、社会主義と革命の伝統は、直接労働者として生活していない人類のすべての正義と美とをこの人生に求める人々までを、その陣営に召集して来た。人類の良心とともに根ぶかい革命の伝統は、歴史とともに空想的なよりよい社会への願望から科学的な社会発展の原理の把握にまで進んで来て、二十世紀には、地球上に続々とより多数な人間がより人間らしく生きてゆく可能な条件をそなえる民主国家が生れ出た。一九一七年のソヴェト同盟の社会主義国家の誕生。一九四五年に東ヨーロッパに人民民主主義政権が確立し、北朝鮮の共和政権が生れ、一九四九年十月には中華人民共和国が出発した。わたしたちが日本のこんにちの現実の中に生き、そして死ななければならない八千五百万の日本人民の一人としての自分の人生を思うとき、たとえば全面講和の要求にしろ、まったくわたしたちの直接な世界平和への良心の声であり、軍事的奴隷としてでなく生きることを欲している独立市民の声である。

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