んな日々を送りどんな死にかたをさせられ、きょうの生活にいたっているかということをふかく思えば、この四年間、日本の人民が「人間として生きる権利」をとり戻すために各方面に骨を折ってきた意義は実に大きい。けれども一九四九年には吉田内閣が議会で絶対多数の勢をかりて、旧い支配階級の勢力をもりかえし、人民がこの社会をもう少しは人間らしく、平和で安心して、住みよいところにしたいと思って試みるあれやこれやの努力を抑圧するために数々の法律や規則をつくった。日本の民主化は非常にジグザグなコースをとって根気づよく、人民の力によって行われなければならない内外の事情におかれている。文学もこの事実からきりはなして語られることではない。
文学が人間生活に対する理解と共感とにたつ愛と努力の社会的な行為だということはあきらかだとして、人間を愛するということ、人生をまじめに受けとって歴史とともに自分もひとも成長させてゆくということは具体的にはどういうことをさすのだろう。ひたすら生活に風波をおこさないようにして、世間のしきたりをそのまま受けついで、その枠のなかで、月、雪、花のながめをたのしんだりして生きてゆくことだろうか
前へ
次へ
全37ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング