、半失業者がふえて一種の性的飢餓の心理がある。だから両性関係は混乱するのはさけがたいとされる見かたがある。その同じ理由からエロチックな中間小説が氾濫するといわれてもいるが、人生を大切に思っているすべての人の心には、このみじめな循環法にたつ説明だけでは納得できないものがある。こんな男にとっても、女にとっても不幸な混乱をそのままにうけとっているだけではいられない気持がある。率直に人生のよろこびの泉として性をきらめかせたいと願う者は、人間としての愛とモメントからきりはなして考えることができない。女にとって男を殺し、男にとって女を殺し、半ばひらいた美しい人間の精神とその性を殲滅する戦争こそ拒絶しずにはいられない。性は母性父性にまでひろがって、人間の性の正当なあつかいかたを求めて叫んでいると思う。精神の解放の証拠としての肉体解放というならば、それはとぐろをまいた肉体文学を突破して、先ず性の根元である生命の人間らしい愛と、その自主性の確立――少くとも戦争と失業のない社会を主張するために闘っている肉体の行動が、現代文学のうちにとらえられて自然だと思う。
実さいではみんながそういう風にやっているのだ
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