る立場でつかんで、処してゆくために。文学ともいえない読物の中には、重役と女秘書、闇の事業の経営者とその婦人助手のいきさつなどがはやっているけれども、パール・バックの「この心の誇り」にとらえようとされている女性の自立の世界と、それはどんなにちがっているかということを見くらべるにつけても、その人は自分の立場をどの点において、判断して行動してゆくだろう。もしその人が小説を書くならば、そこには社交的な恋愛から結婚が、仕事の協力者として発見された人と人との間の愛と結合に発展してゆく「この心の誇り」ともちがい、ただありふれた三角関係をそのままにうけ入れてかこうとしているのでもない、新しい女性としての人生発見のいきさつが、その矛盾のはげしい高低とたたかいの姿でかかれなければならないわけになる。新しいモラルが見出されなければならない。そして、生活と文学とをひとつらぬきにしたその努力がつきつめられてゆくにつれて、日本の現在の社会のままでは主観的に愛情の内容がいろいろにたかめられ、社会化されたモメントにたっているとしても主婦、という立場で日々のいとなみがあんまり女性にとって重い負担だから、当然主婦と職業の
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