語で働く人は作家とはまたちがう一種の特別なものとしての自覚をもっていた。
この節、翻訳権の問題があって、すべてのジャーナリストが困却しているとおり、すべての翻訳家・語学者は活動を閉鎖された形である。生活問題はこれらの人々を真剣にしている。そして、これまで文化の上に軍国主義的鎖国をうけて来た日本の精神を開放し、より人類的に、より民主的に豊にするために、この問題が最も聰明に解決されることを求めている。資本主義出版企業の矛盾の国際性について理解しはじめている。
外国の教養、言葉の知識、したがっていくらか自分たちを日本人の平均より文化的に高いように思っていた人々の罪のない夢は、現実にうち当って砕ける。
未来の社会に向って文化生産者であるという明白な自覚こそが文学でいえば作家に、ジャーナリズムに屈従した存在でない責任感と信念を与える。ただ、字を殖えている職工ではないのだ、という自覚が、市民権の一つの当然な発言として、労働者に闇紙と悪出版への批判を発言させるのは、ごく当然のことであろうと思う。最も進歩した良質の文化人は、今日、文化生産者としての社会的責任を自覚しはじめている。産別のうちで文化
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