画があったんです。そのとき、わたしも会員だったから、作品一篇自選しておくれと云って来たの。それを送ったら、都合によってお返しするとかえして来たのよ」
「ひろ子が自分から送ったのか」
「ええ」
「わざわざ写させてか?」
「そうなの」
重吉は、口元に一種の表情をうかべて、少し念入りにその原稿を見直した。
「婦人雑誌に、何だか中途半端な小説をいくつか書いていたときがあった、あの一つだね」
「そうなの」
原稿を床のそとの畳へ放り出すように置いた。
「ほかの人達もみんな出したのか」
「そうでしょうと思うわ」
「そして、その本は出たのかね」
「どうなのかしら――わたしは見たことないけれど……」
重吉はしばらく黙って、ひろ子の顔をまじまじと見つめた。ひろ子も、その重吉の二つの眼が、ふだんとちがって濃い睫毛に黒くふちとられた四角い二つのまなことなって自分の上にあるのを見ていた。
「ひろ子、覚えているかい? 俺が、文学報国会なんてものは脱退しろ、とあんなに云ったとき、何てがんばったか。――あなたには外の様子が分らないからって、がんばったんだぜ」
そのときのいやさが忘られないように、重吉はひろ子の
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