の帆のようなのも、すべてが物珍しく映った。石がちの土質の白っぽさも、東北とは全く異って櫛比《しっぴ》した町々の屋根、前に見える細い街路も面白かった。二人で来ることのなかった重吉の故郷の景色として、沿線の眺めはひろ子のこころに迫った。
 石田の家のある駅にスーツ・ケース一つ下げて降りたとき、町には正月の粉雪がふっていた。ひろ子の髪や茶色の襟巻に白い雪の片がとまった。駅の名だけを重吉の親たちの手紙から覚えていたひろ子は、来て見れば、きくまでもないそこへの道を駅員にたずねた。そして、訪ねて行ったのであった。その頃重吉の家では、まだにぎやかに商売をしていた。米穀、油類、セメント、左官材料、薪、木炭、タバコ、塩。ほかに直次と進三がトラック運送に働いていて、仲仕が雇われていた。中風にかかっている父親もいくらか体の自由がきいていた。突然東京からひろ子が訪ねて来て、
「ひろ子でございます」
と挨拶したとき、重吉の親たちは、にわかにお父さん、お母さんと呼ばれる自分たちにおどろいたし、ひろ子は、母の若さにおどろいた。重吉はひろ子を妻にしてから、故郷へかえる暇なしに非合法の生活に入ったのであった。
 他人に
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