どこにも見えなかった。地面に大小無数の凸凹穴と、ねじ曲りへし曲げられた鉄骨屑の乱雑な堆積がそこにあった。でこぼこ穴には不潔なたまり水が腐っている。
 給水所附近にあるような脚高の板棧道にひろ子のほか数人の旅客が、次の下りを待っていた。目の前に幾台も汽罐車がひっくりかえっていた。車輪を空へ向けてすっかり腹を見せているのや、なぎ倒されたまま顛覆しているのや、焼け爛《ただ》れてとけた鉄骨だけのこった貨車、客車が散乱していた。一台の自動車がふっとばされて来て、妙なごたごたの間に逆立ちして突こんだまま、そこで焦げ、エナメルがむけて錆びはじめている。
 雨は小やみとなった。濡れるとも云えない軽い雨脚が、リュックにかかった。その板棧道には列車が停る側にきちんと一定の間隔をおいて、何ヵ所にも人糞が落ちていた。掃除もされず、そのまま雨に半ばとけかかっている。
 西へ、西へと来て一夜あけたとき、ひろ子の周囲にあらわれた光景のすべては仮借ないものであった。

        七

 篠笹の藪と、すこしはなれた高くない山並の間の小駅で降りて、ひろ子は、駅前のひろ場へ出た。
 右手に見なれた貨物置場がある。ダラ
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