ろ子にとっては、それが半里だろうと、三里だろうと、もうそれより先は歩かないでいい、というのがありがたかった。
「さあ、もうこんどのったら明石までバタバタせんでええのやから楽です」
ここでトラックを待っている列は、妙な列で、一つもしまりがなかった。七人も八人も一列に押し並んでいるところがあるかと思うと、三四人パラパラと荷物の上にしゃがんで梨をかじったりしている。数台のトラックが真面目に往復しなければ、さばけそうもない人数であった。だが、人々は道端にもう一時間以上、そうやって只待っているのであった。
時々、むこうから復員兵を満載した大型トラックが疾走して来た。ぎっしりつまって四角く突立ってのっている若い兵士たちは、道ばたにだらしなく動くあてのない列をつくって待っているひろ子らの群とすれちがうとき、ワーと賑やかに声をあげ、通過して行った。そういうトラックはどれもが、おしげなくスピードを出しているのであった。忽ち小さくなってゆく後かげを見送りながら、
「チェッ!」
羨望と嫉妬で舌うちする男があった。
「――あいつら、みんな朝鮮人なんだぜ」
朝鮮の若者たちは、戦争の間志願という名目で、軍
前へ
次へ
全220ページ中213ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング