次第に暗くなる窓外をしきりに見ている前の席の男が、
「奥さん、あなた、どうされます?」
ひろ子に向ってきいた。
「さア、私は、その三原という駅まで歩いて、ベンチへでもねようと思って居ますけれど……」
「そんなことが出来るもんですか!」
とんでもないこととして、否定した。
「どんだけの人間がたまっているかしれんのに、第一、ベンチなんかあるものですか。あなた、どうされます?」
ひろ子と並んでかけている男に言葉をかけた。
「さあ――どうにかなりましょう。私は、仕事の関係で、この辺はよく往復していますから」
なるたけ、煩雑になりそうなことにかかわるまいとする調子で答えた。あから顔の、快活なところと弱気なところとが不思議にまじりあっている小柄な男は、須波が近づくにつれ、困却を示した。
「須波やったら、私の知っている家もあるし、多分そこで、宿やの世話をしてくれまっしゃろ。奥さん、わるいことは云わんから、一緒にその家へよって見ませんか」
熱心なすすめかたには、本当に、三原の駅でとまることなんか思いもよらないという状況がうかがわれた。一人旅をしているひろ子への親切とか、好奇心とかよりも、何か
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