んぽぽのような風情があった。それは本当に小さい、単純な存在だけれども、その単純さの完璧は、満目の荒廃の中にあって通りがかるものを優しく感動させ、いのちあるものへの信頼をよみがえらせる。
 さわ子は、空襲のときでも、上空の音響をきいていて、母さん、きょうはここにいていいね、と云うような気立ての娘であった。おのずからの若さばかりでなく、彼女の若さには、伸びようとする一筋の押えがたいものがこめられていた。それは、知らず知らずのうちにさわ子の生きてゆく日々に一貫した生活のよろこびをそよがせているのであった。さわ子が若さの中に感じている未来というものの図どりは、どういうものか。ひろ子とそういうことを話し合ったこともなかった。この前来た頃のさわ子は、海風に腕まで日やけした短い下げ髪の女学生であった。師範の寄宿舎でおなかがすくことを話して笑いこけていた。今度来てみれば、早春の枝のようにコチンとしていたさわ子のからだは、はればれと二十一歳の愛くるしさにみちて、声も美しく深まった。浅黒い面立ちのうちにあるおとなしさと熱意とは、つつましく身だしなみのよい若い女教師の表情に、独特な味わいを与えている。
 ひ
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