とられた。女たちの瞳の中に複雑な警戒の色があらわれ、同時に、どっさりの若い娘たちが、機会を失うのをおそれるような遑《あわただ》しさで、入りこんで来た男たちの妻となった。だが、そういう偶然によって男たちの妻になって行くことを考えられない娘もたまになくはなかった。縫子はその一人であった。縫子の住む界隈にのこっているのは、ほんの小娘の十七八がらみのものばかりであった。二十四五になって家にいる娘は、縫子一人とさえ云えた。兄を出征させているその縫子は、空襲の余波で瓦がみんなずりこけたわが家の屋根に登ってそれを修復した。
 新道が山の切通しを抜け切ったところに、新しい朝鮮人部落が出来ていた。長いきせる[#「きせる」に傍点]をくわえた二人の老人が、部落のはずれにしゃがんで、のんびりした声で話している。一人の方が珍しく紗の冠をつけて、黒い紐を黄麻の服の胸の前に垂らしていた。そこだけ眺めていると、いつか絵で見た京城かどこかの町はずれのような印象である。
 田を埋め、山を切って一直線にのびて来た新道は、一里余来たところで東西に走る新設の大道路と丁字形に合した。トラックの轍《わだち》の跡でほじくりかえされて
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