見ると、むらむらして来るのさ。あの、おばあちゃん、という声きくと、背中が強ばってしまうさ。でもね、わたしは、お母さんが辛棒していらっしゃる以上、もう決してとやかく云わないことにきめたの、わかる?」
「わたしも、おばさんが余りお気の毒で。……」
「お母さんの忍耐に敬意をはらって、もう決してかげでとやかくは云わないことにきめた。いい?」
「よろしうあります」
「つやちゃんの人生だって、ほんとに気の毒だもの。いくさなんて、何てひどいんだろう――女の神経でつやちゃんを刺戟しまい、ね?」
「ほんそうでありますのう」
 二人はだまってしばらく歩いた。永年の戦争は、この土地から、ここに生れ、ここに育った若者たちを、根こそぎよそへ運び出してしまった。その代り、見知らぬ他国から、これまでそこで生活し働いていた場所から否応いわせずひきはがされて来た男の群を、新道沿いの部落部落に氾濫させた。良人を奪われた妻たち、息子を失った母親たち、結婚しようとして相手をもち去られた娘たちは、夫々の思いで、その見知らぬ男の大群を見守った。男の群が膨脹するにつれて、物価が騰貴して行った。そして、どの男の眼にも、心の飢えが感じ
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