ことの予期されなかった扉の蝶番《ちょうつがい》を、きしませはじめているのであった。
 縫子が、洗ものをかかえて新道から下りて来た。ひろ子がひろげているものを肩越しに見て、
「まあ」
と云った。
「きのう、わざわざのけておいたのに!」
 ひろ子は、
「いい、いい」
と、小声で、なだめるように囁いた。扉は、いつ重吉のために開かれるであろうか。それは、ひろ子にとって生々しい切迫感であった。自分よりはるかに若いつや子にとって、待つべき人は永久に失われてしまっているという意識は、ひろ子の声を喉につまらせるのであった。
 水が出て四日目に、二階での干しものは大体かたづいた。母親のセルをたたみながら、
「これであらかたすみましたのう」
 すみ[#「すみ」に傍点]ましたというところにアクセントのつく地方の言葉で縫子が云った。
「夕方までに、わたし帰ります」
「そうする?」
 ほんの一二泊のつもりで来た縫子は、水で足どめされたばかりか、窓をこえて逃げ出すときも荒っぽいあと片づけにも、力になりたすけてくれた。縫子をこの上はとめられなかった。
「わたしも一緒に行っちゃおうかな」
 いくらかきまりの悪そうな子
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