、あたりまえな雨の水たまりがあるばかりだった。砂利を足の裏に痛くふみながら崖に沿って寺の境内へ登って行った。
本堂に燈明がついて、もうそこに黒い人影が群れていた。朝鮮人の家族が多かった。石田の家の先に小川が二股になった三角地帯があり、そこに朝鮮人の農家があった。登代が様子をたずねた。
「はア家もなんもありゃせん」
それは誇張ときこえないのであった。
みんな、濡れたものをぬいで板じきの隅に一かためにおき、誠は、縫子が手当りばったり入れて来た女ものの浴衣を体にかけて、寺でかしてくれた毛布にくるまった。
十一
夜なかにあんな騒ぎがあったそれを信じかねるような快晴の朝になった。
山門から下って新道の上へ出、それを横切って短いダラダラ坂を石田の家もある一かたまりの部落の往来へ入りかかって、ひろ子は惨澹たる有様におどろいた。とっつきの家では、壁をおとされている。一夜に竹こまいばかりの家になり前の往来に水漬り泥まびれになった家財道具、衣類が乱雑にとり出されている。泥田の中からひっぱり出したような子供の派手な友禅模様のチャンチャンが放り出してあるわきに、溺死した二羽の白色
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