ここへ来て、ほん……」
たよりないつや子と母との話だけを又伝えにして、直次さんについてはもう諦めていられますと、重吉に書く勇気はひろ子にないのであった。
それとも、つや子が自身で縫子の夢にきこえた三次《みよし》というところを訪ねて行きたいこころもちだろうか。
「どうする? つや子さん。自分で行かなくても気がすむこと?」
「さア……」
「つや子さんの気がすむ方にしましょうよ、ね」
「……………」
「こんどは、御苦労でも、ひろ子はんに行んで貰おう、いくらかしゃんとした話もせまあじゃ、のう、つや子はん」
「はア、それがよろしうあります」
相談がきまった。登代が、ねそびれて泣く治郎をおんぶして、駅へ切符の工面に出かけた。
その母が帰り途にかかったと思われる頃、雨が落ちて来た。
「降って来たね、あした雨かしら、困ったこと」
縫子も立って来て、小さいパンツの干してある低い軒先から雨脚をみていたが、
「降りよりますで――これは……」
と、土地ものらしい確信で云った。
「お母はんに、傘もっていて上げなきゃ」
「そうだわ」
ひろ子が土間をさがしたが雨傘らしいものは見当らなかった。
「つや子さ
前へ
次へ
全220ページ中101ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング