れないので、近所で旅行案内をかりて地図をみたら、
「不思議でありますねえ」
縫子はしんから偶然の符合をおどろくように濃い眉を傾けてひろ子を見た。
「ほんにミヨシというところがありました。三次とかくの。芸備線で二時間ほど広島から行ったところに」
「ふーん。そんなことってあるものなのかしら。――そいで、どういうところなの、その三次《みよし》って……」
「病院はありますって」
「陸軍病院?」
「そうじゃないらしいけど……。もしかしたら、わたしつや子はんとつろうて行って見て来ようかと思って」
黙って熱心にきいていた登代が、
「その三次《みよし》は、つや子はんがしらべに行きよった豊田村とはまるで別の方角のところじゃろ、のう」
「あれは万部線でありましょう」
「の、つや子はん、つや子はん、ちょいときてみさいの」
ねむりかかった治郎をあぶなっかしくおんぶして、つや子が土間から上って来た。
「のう、あんたが、先度ゆきよったのは豊田村じゃのう」
「はあ」
「そのとき、本部で、三次たらいうところのこと云わなんだか」
「さあ……」
「縫子はんが夢を見たといの、つろうて、さがしに行こうかと云うてじゃよ」
つや子は、薄すり凹んだ瞼をあげるようにして、縫子からひろ子、母へと視線をうつした。
「本部でも、云うてでありました。鳥取県の三朝《みささ》あたりまで分散治療に送ってあるよって、個人でさがしたら、一年かかってもよう分るまいて……」
豊田村から又二里近い山下の国民学校に移った本部の残務整理責任者は、つや子に向って、石田直次軽傷と記入されている一冊の帳簿を開いて見せた。又別のもう一冊を出してみせたら、それには、石田直次の項に、行方不明と記載されていたのであった。
ひろ子は、雲を掴むような話をきくにつけ、自分で一度豊田に行って来ようと決心していた。きのう着いて、つや子と母との話すのをきいているうちその心がきまった。
「じゃ、いっそのこと、こうしましょうか。私は、ともかく一遍どうしても豊田村へ行って調べたいから、明日、縫ちゃん行かない? そして、三次《みよし》のこともよくきいて、もし手がかりがありそうなら、まわって来てしまうわ、いかが?」
「――えらい難儀じゃのう」
母が気づかわしそうにゆっくり呟いた。
「行ってもろうたら、それにこしたことはないけれど……ほん、東京であんな目えみて、
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