た。新しい道づれの持っていた大きいボール箱には、ひろ子の口に珍しい松茸がつまっていた。
「きょう中に大阪へつく予定だったんで、米をもっていません、すみませんが……あした何とかしますから……」
 岡山から乗ったその男の松だけが、お菜になって出た。
 膳が運ばれたとき、新しいつれは、
「どうです、一口」
 そう云いながら立って床の間のスーツ・ケースをあけた。
「一口って――あるんですか」
 支店長が、きらいでもなさそうに、そっちを見た。
「ありますとも。――私は、人の機嫌をとる商売でしてね」
 アルコールの壜を出した。それを注いで水をわった。
「案外いいですよ、さっぱりして」
 支店長は、うたがわしそうに小コップをとりあげ、日本酒ののみかたで、チビリと流し込んだ。
「何や……こう……えろうカーッとしますなあ」
「そうですか、馴れるといいもんだがな」
 一方は、ブランデーをのむように、パッと口の中へあけるようにのんだ。
「――奥さんいかがです」
「私は無調法なんです、本当に駄目」
 新しい道づれは、名を云えば大抵のものは知っているらしい大阪のキャバレーの持ち主であった。ひろ子は、文楽以外に大阪をよく知らず、そのキャバレーがどんなに大規模なのかも知らなかった。慶大かどこかを出たその男は、惰勢とか卑俗とかいう字句をつかって自分の商売を客観的に、時には自嘲的に語りながら、やはりとことんのところではそれにひかれ、そういう面での敏腕をたのしんでもいるらしかった。
 表の三畳間に、一人永逗留の女客がいた。ひろ子は、そのひとの布団に入れて貰って、朝まで熟睡した。
 部屋へ帰って見て、ひろ子は思わず笑い出した。
 一枚のきたない掛布団をしき、二人の男が、行儀よく並んで仰向いて、パチパチ天井を見ている。上に一枚かかっているのも薄い掛布団だが、それは二人にかかるように横にしてあった。小柄な支店長の方はまだよかった。けれども、背のぐっと高いキャバレーの主人のやせた両脛は、白いズボン下を見せて殆んどむき出しになっていた。
「お寒かったでしょう、それじゃあ」
「いや、なに」
 そういうものの、二人ながらそれぞれに閉口していることは一目瞭然であった。
 又米を出しあって朝飯をして貰った。終ると男二人は前後して、降ったりやんだりの雨の中を駅まで様子[#「様子」に傍点]みに行った。
 一人になった部屋で
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