こから1字下げ]
「御隠居様、『おともさん』は……
[#ここで字下げ終わり]
と一層はげしく笑いこけながら、呉服屋からうけ取った金を小口から買物にはらったのだけれ共、一度|代《だい》をはらうと、黄色い財布からチャラチャラと一つあまさず出して、すっかり勘定をしてからでなければ仕舞わない。幾度でも幾度でも繰返して、私共をやたらに待たせたとその銭を勘定する手つきまでして見せた。祖母は、
[#ここから1字下げ]
「あのお婆さんは、今夜きっとその財布をお臍《へそ》にあてて寝るんだろうよ。あした目が覚めて見るとお札がむれて、かびだらけ。
[#ここで字下げ終わり]
等と云ったので、買って来たものを見せもしないで、はめをはずして笑って仕舞った。その時から女中はあの人の事を「お臍のお札」と云う名にして居た。けれ共それは、家中三人ほか知る事ではなかった。
二十六日の日に東京から、菓子と果物と「鳥そぼろ」がついて、同じ日に十二月分の国民文庫が届いた。
夕方、源平団子と云う菓子屋で餅をつかせて呉れと、こぼれそうな腹をした主婦が手帳と鉛筆を持って来た。家で食べる分は少しでも、食べさせる分が沢山いるので、納屋
前へ
次へ
全109ページ中94ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング